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カフカ「城」
変身と並ぶカフカの代表作。城に呼ばれた「測量士」が、城に行こうとするが、いろいろな障害(?)にぶつかり近づくことができない。という状態が延々と続く、という未完の作品である。城は一種の官僚機構のように解釈されるときもあるが、確かにそういう感じはする。最初は珍しくておもしろいと思うが、文庫本で600ページあるからだんだんと飽きてくる。しかし、ストイックなまでに、この主人公と他の登場人物との間のダブルボケのようなやりとりが続く。読者のカタルシスを一切否定する。不思議な作品である。
ラフマニノフの交響曲と花輪高校
“ラフマニノフ:交響曲全集” (アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 アシュケナージ(ヴラディーミル))
安くなっていたので買ってみた。ラフマニノフは実はあまりちゃんと聞いていなくて、1番・3番は初めてCDを買った。演奏だが、全体にはやや荒っぽい(1>2>3の順で荒いか・・・)。しかし、何となく感情に流される感じの演奏は、ラフマニノフの雰囲気にはそれほど合わないわけではない。録音は残響多めでよさげな感じもするが、玄人うけするかどうかはわからない。
2番は久々にちゃんと聞いたが、やはり名曲なんだろう。構成力はあまりないが、音楽は豊かだ。3番はやや渋めで一般受けはしない感じだ。1番の全曲を初めて聞いたが、結構おもしろい。2番ほどの魅力はないかもしれないが、わかりやすいし、終楽章はなかなかかっこよい。2番の終楽章より好きだ。この1番の終楽章は昔々、秋田の花輪高校が吹奏楽コンクールの自由曲で演奏していて(全国大会金賞)よく聞いていた。その編曲前を初めて聞いたわけだが、その原曲と編曲のかなりの違いに驚いた。カットは相当に大胆だし、楽譜も結構変えていて、単なる編曲というよりも、一種の作曲に近くなっている。小林久仁郎恐るべしと思った。
ミヨー作品集
“ミヨー:管弦楽曲集、ピアノ曲集(2枚組)” (Brilliant Classics)
バーンスタイン指揮のオーケストラ曲と、ベロフらのピアノ曲が入っていて2枚で1000円程度のお得なセット。世界の創造が素晴らしい演奏。
トヨタの闇
今話題のトヨタはこんなにひどい会社という本。出版は2007年なので少し前。巨大な広告費で反対意見を抑えてきたというのは、最近の報道でよく言われているが、少し早めにちゃんと指摘しているのは偉いのだろう。
しかし、その「闇」の内容を見てみると、それほど特別には思えない。過労死・第二労組・下請けいじめ等。あまり誉められたことではないが、統計的には示されておらず、特殊ケースの羅列で、それで企業の体質を判断できるというほどではない。リコール問題についても、出荷台数が多いんだから、まあこれくらいはあるのでは、という気になってしまう。タイトルほどは刺激的な内容ではない。
フックスによるニールセン等
“Martinu, Nielsen, Koechlin: Serenade” (Supraphon)
フックスはその前任のカール・ライスターが、(玉石混淆な)多数の録音を残したのに対して、それほど録音は多くない。そんな中最近、ホルンのバボラークと組んだ録音を出した。曲は、ニールセン・マルティヌー・ベリオ等で、すべて初めて聴く曲で、編成はCl・Hr+弦等で、やや特殊である。
フックスの演奏は、非常に軽快で巧みである。ベルリン・フィルを聴いても、そういう印象を受けていたが、アンサンブルは特に強くそれを感じる。でも、カリスマ性はあまりないかな・・・。バボラークのほうはカリスマ性があるような気がする・・・
Mahler Sym.No4の室内楽版
Mahler Symphony No. 4; Lieder eines fahrenden
販売元:Capriccio |
真のマーラー好きは、こういう際物は聴かないのかもしれない。これはLinos Ensembleによる室内楽版である。編成は、フルート・オーボエ・クラリネット・2本のヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・バス・ピアノ・ハーモニウム・打楽器である。オーケストラの厚みは得られないものの、一人一人の音と表現が非常に良く分かる。クラリネットもとてもリアリティのある音に録れている。生々しい。オーケストラのような全体を録らなければならない録音ではこのようなことはできない。自分はこういったオーケストラの室内楽版というのがとても好きで、CDを見つけると大体入手している。Linos Ensembleの演奏も素晴らしい。
ショスタコーヴィチ/24 Preludes & Fugues
ショスタコーヴィチ/24 Preludes & Fugues: Nikolayeva (1962) 販売元:HMVジャパン HMVジャパンで詳細を確認する |
この曲は、ショスタコーヴィチがバッハを意識して作曲した作品である。全ての調で前奏曲とフーガが作られている。とても多彩な、時には古典的な、時には前衛的な、傑作である。彼は調性で創造的な作品を書けた最後の人ではなかろうか。演奏はかなり鋭い怪演である。第15番のフーガの尖った感じはなかなかすごい。
ショスタコーヴィチによる弦楽四重奏
Shostakovich: Complete String Quartets No.1-15, Elegy For String Quartet / Borodin String Quartet 販売元:タワーレコード @TOWER.JP タワーレコード @TOWER.JPで詳細を確認する |
ショスタコーヴィチの弦楽四重奏は初めてちゃんと聴いた。全15曲ある。第1番が、交響曲第5番の後というから、結構遅くに書き始められたことになる。彼の交響曲は正直なところ玉石混淆という気がするが、こちらは粒ぞろいでおもしろい。曲は基本的には調性により、それほど難解ではない。かといって大衆に媚びる音楽では全然無い。彼の本音が出ている感じがする。演奏もハイレベルですばらしい。