ホーム » 「cd」タグがついた投稿 (ページ 2)

タグアーカイブ: cd

カラヤンのベートーヴェン交響曲(60’s)

“Symphonies (Complete)” (Dg Imports)

カラヤン・ベルリン・フィルの最初のベートーヴェン交響曲全集。今はかなり安く買える。買ったきっかけは、「指揮者の役割」という本を読んで、60年代の全集ではフルトヴェングラー的な響きが残っている、みたいな記述があったから。別にフルトヴェングラーが好きなわけじゃないけど(むしろどちらかというと嫌い)、どんなもんだろうと思って買ってみた。また、これまで買ってなかった理由だが、この全集の第九だけバラで持っていたのだが、この演奏があまり良いと思えなかったからだ。勢いはあるけど雑な印象があった(出だしのAが合ってない時点で萎えてしまう)。

一応、ざっと聞いてみた。(自分がベートーヴェンをあまり聞いていないのは差し引いていただいて・・・)最も印象に残ったのは田園である。何というか、自分が田園ってこんな感じじゃないか、というものが全て実現されているように思える。もしかしたら、あまりにこれが世の中に流れているために、それが体に染み付いてしまったのではないかと思えるほどだ。弦はかなり美しいし、木管のソロもすごい。カラヤンは偶数番のほうが向いているのではないだろうか。4番もとてもよかったと思う。ただし、8番はややガッチリ感がありすぎて、70年代のほうが軽快で良いと思った。2番はそもそも自分が価値がよくわからないのでパス。

5番・7番は意外に普通で、悪くない。フルトヴェングラーが好きとなると物足りなく感じる人もいるかもしれないが、自分はこれで十分で、結構ちゃんとがっちりやってるように思った。1・3番も悪くない。

9番も改めて聞いてみると、意欲的な演奏ではあったのかなと思った。

クラリネットの観点からすると、このころはライスターは吹いているはずだが、全部吹いているかは知らない。4・6番は明らかにライスターだろう。すごい。神演奏である。全体としては、要所は抑えているものの、すべて完璧という感じでもない。

で、最初に書いたフルトヴェングラー的な響きがあったか?ということだが、そもそも自分がフルトヴェングラー的な響きを知らないので、判断がしにくい。しかし、このころのベルリン・フィルは、何というかガッチリ感があって、70年代の洗練さとはちょっと違うのは確かだ。あとは録音がイエス・キリスト教会だから、こちらの録音のほうが好きという人はいそうだ。弦の音が結構違うのではないか。録音は良いと思う。

ブーレーズの幻想(1996)

“ベルリオーズ:幻想交響曲” (ブーレーズ(ピエール), クリーヴランド管弦楽団合唱団)

このCDはかなりヘンである。それは録音・演奏の両方でである。まず、録音からいくと、音は美しくとれているが、広がりに欠けている。これは、同じ組み合わせの、春の祭典の録音にかなり近い。あの録音も非常に不思議な感じで、ホールっぽさがあまりなく、普段聞こえないパートが聞こえることが多かった。作った感じの録音は昔からあったが、こういう感じはあまりなかったと思う。

次に、演奏についてだが、おそらくこの演奏で満足するターゲットはかなり狭い。普通の幻想を望む人からすれば、出だしの弦の貧相さで萎えてしまうだろう。また、ブーレーズのファンは、ブーレーズはダメになったという感じでとらえるだろう。ロンドン響との録音にあるような、冷たい美しさは、ここでは聞かれない。4・5楽章は何かはぐらかすように、普通な感じである。

しかし、自分はこの演奏の3楽章が妙に気に入ってしまった。うまく説明できないのだが、雰囲気がしみじみとして良いのである(そういうとすべての演奏がそうかもしれないが)。木管がうまく録れていることもあるのかもしれない。

クラリネットの観点からすると、この演奏はかなり良い。Hrを含む木管セクションのアンサンブルの質が高い。例えば、1楽章前半の木管を、これだけちゃんとやっている演奏は、最近いろいろ聞いた中でなかったと思う。しかし、冷静に考えてみると、現代のトップオケは皆これくらいはやるのかもしれない。ラトル・ベルリンあたりも聞いたほうがよいのかもしれない。

EsのソロはかなりEsっぽくなく(?)やっている。これまで、やたらとキャンキャンする演奏が多くて辟易していたので、こういうアプローチもあるのだなと安心した。ベーレンライターのパターンだったので楽譜もおそらくそうであると思われる。

マルケヴィッチの幻想

“ベルリオーズ:幻想交響曲” (マルケヴィッチ(イーゴル))

幻想レビューもこれが最後。HMVのレビューで評判が良かったので聴いてみた。フランスのオケらしい華やかさのある演奏。録音も悪くない。ミュンシュ・パリ管よりもフランスっぽい(?)かもしれない(パリ管は良くも悪くもモダンでインターナショナルなオケだ)。フランス物をフランスのオケでちゃんと(録音で)聞ける体験は意外に少ない、と自分は思っているので、こういう録音があるのはうれしい(クリュイタンスの幻想は聞いてない)。しかし、CDの帯にあるような、卓抜な分析力というのはよくわからなかった。指揮者がテンポを恣意的にいじる場面があったりする。すっきりしたモダンで分析的な演奏を聞きたいのなら、ブーレーズを聞いた方がよいだろう。

クラリネット的には1st・Esともに悪くないと思うが、まあ、オールド・スタイルだろう(それがオケの華やかさに繋がっているのかもしれないけど)。

アバドの幻想

“ベルリオーズ:幻想交響曲” (アバド(クラウディオ))

1983年の録音。広島の鐘の音を使っていることで当時話題になった。オケはシカゴ響。録音は確かに良く、自分には特に弦楽器が良く録れているという印象を持った(低弦のゴリゴリした感じ等)。金管は好みの分かれるところだとは思う。しかし、4・5楽章の金管は、好みの差はあれ評価できるのではないか。モダンで高性能な金管セクションが存分に能力を発揮している。

クラリネットはとても良いと思う。太い充実した音で吹いている。

幻想にフランスらしさを求める人には薦めないが、録音含めて、モダンな演奏の一つの頂点なのではないかと思った(これ以降はオリジナル楽器演奏も出てくるし)。

ブーレーズの幻想(1967)

幻想のお勉強第2段。ブーレーズはクリーブランド管と幻想を録音しているが、かなり昔の1967年にロンドン響とも録音をしている。上のCDはベルリオーズの3枚組で1700円前後とお得になっている。

演奏はミュンシュとは対極で、冷静で一つ一つの響きを確かめるようにクールでモダンである。これが1967年録音なのは信じられない。この年はまさにミュンシュ+パリ管が録音した年であり、カラヤンの新しい版(1974)もまだである。最近の録音と言われても驚かない。とてもモダンな演奏である。演奏の質もとても高いし、録音も(SONYには珍しく)とても良い。ミュンシュが好きな人には薦めないが、もっと評価されても良い演奏だと思う。

クラリネットの観点では、1stは良いが、Es管がイマイチである(パリ管ライブと逆)。

ミュンシュの幻想(1967ライブ)

“ミュンシュ&パリ管/ドビュッシー:交響詩「海」 他 (Berlioz:Symphonie fantastique&Debussy:La Mer / Munch & Orchestre de Paris (14/11/1967)) [日本語解説付]” (ALTUS)

幻想をやることになりそうなので(2ndだけど)、家にあるCDを探したら、あまり良いのがなかったので調達することにした。これは、約2年前に発売されて話題になった、ミュンシュ+パリ管のライブ録音である。ミュンシュ+パリ管と言えば、EMIから有名な録音が出ている。パリ管設立直後の名演とされている。その少し後にミュンシュは急死してしまうため、パリ管とミュンシュの録音は少ない。上のライブ録音はそのEMIの録音と近い時期に行われたものである。

このライブはものすごい熱演である。指揮者が強烈にドライブする。テンポが急激に変動するが、オーケストラがかなりがんばって付いて行っている。崩れそうになりながらも、アンサンブルを維持している設立したてのパリ管は大したものである。ミュンシュのライブ録音は、フランス国立(放送?)管弦楽団との幻想を聞いたことがあるが、同じように強烈にドライブされて、オケが崩壊しており、あまり良い演奏ではなかった。

自分はあまりこういう熱演は好みではないのだが、この演奏についてはかなり気に入った。EMIの録音よりも良いと思った。演奏の熱さについては、好みがわかれそうだが、EMIの録音よりもこのライブのほうが録音は良いと思う。ライブ版は、ややデッドである欠点はあるが、結構クリアにとれている(しかし、宣伝文句ほどの名録音でないことは注意したほうが良い)。一方、EMI版は、一つ一つの楽器の音は良くとれているし、響きはある。しかし、全体の響きがクリアでなく、音がごちゃごちゃする感じである(EMI版は2007年の日本向けの24bitリマスタリング)。

クラリネットの観点からすると、Es管が良いと思った。一方、1stはオールド・スタイルという感じで、あまり魅力的とは思わなかった(これはEMI録音も同様である)。昔のパリ管は全体としては好きだが、クラリネットが好みではないのであまり聞こうと思わない。最近のパリ管はクラリネットは好きだが、全体(というか指揮者?)が好みではないので、やっぱりあまり聞こうと思わない・・・

ブロムシュテットのヒンデミット集

“Orchestral Works” (Hindemith, Sfs, Lgo, Blomstedt)

ヒンデミット大好き人間(好きな作曲家ベスト5に入る)である私の愛聴盤である。オケはサンフランシスコ響である。オケに力がないのではないかと思って、買わない人もいると思うが、この組み合わせは結構良い仕事をしていると思う。他にシベリウス交響曲全集がでているが、これも好演である。非常に録音が良いのが特徴である。バランスよく豊かな響きで録音されている。

一番好きなのは、「ウェーバーの主題による交響的変容」である。軽薄と言われようと、でもかっこいい。このモダンとクラシカルな感じが入り交じった独特な雰囲気がとてもよい。あの変態的なマーチがとても・・・。この曲には、アバド・ロンドン響の名演もあるが、この演奏も甲乙付けがたい(一方、アバド・ベルリンはイマイチである)。クラリネット的には3楽章の出だしにソロがあったりはするが、それほどおいしいという曲でもない。ヒンデミットはクラリネットに名曲を残していると思うが(ソナタ・五重奏)、オケ曲ではそれほど魅力的なソロを残していないような気がする。一度はやってみたいと思うが、アマチュアが簡単に取り組めそうな曲でもない(スコアを見るとシンプルでびっくりするが)。というより、選曲してもらえないだろう・・・

 

チョン・ミュンフンのシェヘラザード

“Scheherazade / Firebird Suite” (Dg Imports)

シェヘラザードを目的に購入。指揮者の明確な指針と、トレーニングされたオーケストラと、バランスのとれた録音と、三拍子そろった好演。シェヘラザードは名曲の割には、意外にあまり良い録音がないと思っていたので(ロストロは派手すぎ・カラヤンはやや雑?・ストコフスキーは録音と木管に難が・・・等等)、貴重だと思う。火の鳥は元々名演が多い曲なので、わざわざこれを聞くこともないとは思うが、これはこれでおもしろい。バランスよくまとまっている感じ。

チョン・ミュンフンは、「通な」人から見れば、深みがないとか言うのかもしれないが、このようなちゃんとした演奏を提供してくれるのは、(アマチュア演奏家な)我々にとってとてもありがたい。録音はいわゆる「作った音」という感じである。ライブが主流の最近の録音では、こういうものはほとんどないと思う。しかし、自分は(カラヤン時代から進歩を重ねた)こういう作った音がとても好きなのである。

 

ヤルヴィのベト1

“ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」&第1番” (ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン ヤルヴィ(パーヴォ))

割と新しい録音(2006)。ピリオドの成果を利用した最近流行りの感じの演奏。ティンパニ・ラッパはオリジナル楽器であるが、その他はモダン楽器である。テンポは小気味良く、サクサク進む。重みのある演奏を好む人には向かないが、こういう演奏が最近の主流だろう。2曲の中では1番のほうが良いように思えた。5番は今ひとつ新鮮な感じはしなかった。クラリネットは、ハーディングのブラームス ほどは魅力的ではない。多分同じ人だとは思うが、おそらく楽譜指定通りにC管で吹いているのであろう。C管ではどうしても音が明るすぎてしまう。曲想に合うということなのだろうが、自分はどうもC管の音は苦手である。オリジナル重視の考え方には学ぶべきものがあるが、自分はB管でモダンに吹くほうが好みである。録音はまあまあだがあまり良いとも思わなかった(SACDでは聞いていない)。最近のライブ録音を良いと思うことは自分には少ない。

ハーディングのブラームスSym3+4

“ブラームス:交響曲第3番&第4番” (ハーディング(ダニエル))

2001年の録音で、最近は安く買うことができるようだ。最近ブラームスをやる必要があったので、引っ張り出してきた。ピリオドの成果を室内オケに取り込んだ名演。とても繊細で美しい。これを聞いて、すっかりハーディングのファンになってしまった。このときは、きっとラトルのような指揮者になるのでは、と期待させたが、その後、あまり目立った録音は残していないように思う。先日、スウェーデン放送響との来日公演の巨人(初日の横須賀)を聞いたが、普通にとても良いのだが、あまり独自性やカリスマ性は感じられなかった。伸び悩んでいるのだろうか?

この録音のクラリネットは一聴の価値がある。両曲ともに大変素晴らしい。こういう演奏が、現代的な正しいクラリネットだと私は思う。ドイツ式とかフランス式とか感じさせない、インターナショナルで豊かな響きである。

ドイツ・カンマーフィルはその後P.ヤルヴィに指揮者が変わって、最近はベートーヴェンの交響曲全集を録音している。そのうちDVD買って見よう・・・

category

archive