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日本のポストモダンはどうなったか

集中講義!日本の現代思想—ポストモダンとは何だったのか (NHKブックス)

仲正 昌樹

日本放送出版協会


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またまた仲正氏の本を読んでみました。今度は、日本におけるポストモダンの話です。自分が大学生のころはちょうど浅田彰の逃走論が出た頃で、ポストモダンははやっていました。朝日ジャーナルも売れてましたし、自分の本棚を見ると、フーコーの「性の歴史」I・IIがありました(Iは多少わかったが、IIはちんぷんかんぷんだった気がする)。今から考えると変な時代でした。さて、この本ですが、日本の思想界がマルクス主義の強い影響を受けながら発展し、ポストモダン流行につながり、冷戦終結とともに廃れていくさまを、結構わかりやすく書いてありました。多少偏った見方なような気もしないでもないですが・・・

忘れられた人々=ニューディール時代の保守主義者

アメリカ大恐慌—「忘れられた人々」の物語(下)

アミティ・シュレーズ

エヌティティ出版


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先日のレポートの下巻。副題の「忘れられた人々」にはいろいろな人があてはまると思われるが、一つには、ニューディール時代に不遇で、政府から悪者にしたてられた、保守主義者(というか競争を信じる意味での自由主義者)にスポットがあてられている。TVAに事業を妨害された電力業者や、中間搾取として訴えられたユダヤ人の鶏肉卸売り業者等、市場と競争のアメリカ的世界で成功者であったはずの人達が、悪者としてつるし上げにあう様子が描かれている。この本は解説にあるように、やや保守主義的なニューディールに否定的な見方に偏ったところがあるが、大恐慌の混乱と不信の中でこのようなことがあったことを記憶にとどめておくことは、今日の我々にとっても悪くないであろう。

ポストモダンとオタク・・・東浩紀

ゲーム的リアリズムの誕生~動物化するポストモダン2 (講談社現代新書) Book ゲーム的リアリズムの誕生~動物化するポストモダン2 (講談社現代新書)

著者:東 浩紀
販売元:講談社
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ポストモダン的観点で、ライトノベルや美少女ゲーム等のオタク的文化を分析したもの。大きな物語が崩壊した後に、データベース的・・・文脈からキャラクターが抽象化された世界・・・な世界がポストモダン的に出現するという前半の論考はわりとしっくりといくもので、後半の個別作品批評も私のようなおぢさんへのオタク文化入門になっていて大変参考になるし、普通におもしろい。ただ、そんな単純にうまくいくのかな、何か(ポストモダン思想の)ご都合主義になってないかな、という疑問は生じる。近代vs.post近代みたいな対立軸でものが語られるが、現代の我々はそういう論法に飽き飽きしている(江戸ブームなんかもそういう感覚から来ているのではないかなあ)。世のオタク達もこの考察のモデルをあまり良く受け取らないかもしれない。データベース的な文学をポストモダンと考えているが、自分の狭い経験で考えると、例えば、源氏はデータベース的じゃあないだろうか。オリジナルのコンテキストから逸脱して様々な変奏を生み出した。また、ギリシャ神話ももしかしたらデータベース的な気がする。近代という枠を超えて考察することも可能だと思うのだが、どうだろうか・・・。この本はそれなりに重要な指摘をしていると思うから、それに応える思想なり論説が出てくるのを見ていきたい。

アメリカのデモクラシー

アメリカのデモクラシー (第1巻上) (岩波文庫)

トクヴィル

岩波書店


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「アメリカのデモクラシー」は、文庫で第1巻上下、第2巻上下の4冊でなっている。その最初の第1巻上を読んだ。地方自治に関する賞賛はあるものの、デモクラシーというよりは主に政治体制に関する記述になっている。アメリカの立法・行政・司法の仕組みについて概観してあるからアメリカ入門としても読むことができる。文章もそれほど難しくはない。19世紀だから現代とは違っているだろうが、基本的な所は(多分)変化ないと思う。書かれた時代は、合衆国憲法からは40年程度経っているが、南北戦争の前である。アメリカの制度設計が、アメリカという前例のない特殊な状況で、ある意味運良く機能したことが示されている。賞賛だけではなく、批判的な目も向けており、古典としての価値が感じられる。また、著者の母国フランスとの対比が興味深い。

<宗教化>する現代思想

〈宗教化〉する現代思想 (光文社新書)

仲正昌樹

光文社


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「集中講義!アメリカ現代思想」が結構おもしろかったので、同じ著者のこの本を読んでみた。いろいろ書いているが、非常に要約して言うと、哲学・思想は常に何か絶対的なものを仮定する「形而上学化」の罠に陥る危険をいつも持っていて、マルクス主義がそうだったが、現代フランスのポストモダンのような一見、形而上学化に背を向けているような思想でも例外ではない。その中で我々は思想を相対化し、宗教化する現代思想の罠に陥らないような行動をとれるのだろうか・・・ということだと思う。それなりにおもしろかったけれども、何か良い答えがないような・・・。自分の信奉する「自由」も一種の形而上学なのかもしれないが、それはそれで宗教として楽しんでもいいような気がする。

トクヴィルとアメリカ

トクヴィル 平等と不平等の理論家 (講談社選書メチエ)

宇野 重規

講談社


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アメリカに関する論考を見ると、かなりの確率で引用されているのが、トクヴィルの「アメリカのデモクラシー」だ。池田信夫ブログによると、「だれでも知っているが、だれも読んだことがないという意味での古典」なのだそうだ。そこで「アメリカのデモクラシー」を読む前に解説書として本書を読んでみた。トクヴィルは最近(特にアメリカで保守主義が復活してから)見直されているのだそうだ。大統領の演説にはよく引用されるらしい。アメリカのデモクラシーを一種の理想として描いているからだ。それは19世紀のフランス貴族の出である彼の目から描かれている。機会の平等を基本とし、一見、各人が自身の利益を追求しているように見えながら、全体の利益にも繋がるという、デモクラシーの理想型ととらえている。非常に魅力的な思想だ。「ザ・フェデラリスト」と共にアメリカ論の古典として知られている。次は、「アメリカのデモクラシー」本文を読んでみたいと思う。

自由の奥は深い

集中講義!アメリカ現代思想—リベラリズムの冒険 (NHKブックス)

仲正 昌樹

日本放送出版協会


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アメリカが、現代、アイデンティティの喪失を迎えつつある中で、自由や平等をどう、考えとらえ直し、体系化していったかという自由論の解説書だ。リベラリズムからリバタリアン・コミュニタリアン等、一通り触れられていて大変参考になる。しかし、自由の思想の奥は深い。ハイエクやハンチントンをちょっと読んだだけで、アメリカを知ったような気になってはいけない・・・と自戒した。

藤沢周平を読む

三屋清左衛門残日録 (文春文庫) Book 三屋清左衛門残日録 (文春文庫)

著者:藤沢 周平
販売元:文藝春秋
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最近、時代物がはやっているという。自分はその手の作品を全く読んだことがなかったが、はやりにのって少し読んでみることにした。江戸時代に少し興味がある。選んだのは藤沢周平の三屋清左衛門残日録だ。隠居した元用心のエピソード集というものだ。江戸武士のこころがわかるのではないかと期待して手に取った。
感想だが、良質なエンターテイメントという感じだ。これを時代物というのだろうか?という疑問がわいた。設定は江戸時代にしているものの、扱っているテーマは普遍的・・・というほど大げさではないが、現代にも通用するものである。文体も平易だし、非常に現代的であると感じられた。また、主人公は隠居とは言うもののヒーローとして描かれている。物語として読みやすい。こういう話を好む人は多いだろう。テレビドラマにもしやすそうだ。しかし、自分には物語を楽しむという習慣があまりない。実用的な本のほうが基本好きなのだ。これだけ読めば、この作家についてはもう十分という気分だ。

パブリック・ディプロマシーの概念

アメリカン・センター—アメリカの国際文化戦略

渡辺 靖

岩波書店


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パブリック・ディプロマシーとは、ざっくり言うと、国の文化的な成果や政治的な考え方等の価値を海外に対して発信して、外交上有利にしていこうという考え方である。アメリカは、かつて、彼らの持つ自由の概念を、世界に対して発信することにより、影響力を与えたり、自分達の行動を正当化したりしてきた。しかし、アメリカのパブリック・ディプロマシーは、ベトナム戦争やイラク戦争等を経て、色あせてしまった。冷戦が終わって、アメリカのパブリック・ディプロマシーに対する取り組みは低調になったが、9.11・イラク戦争を経て、アメリカに対する世論が厳しくなるのに影響され、再び見直されるようになった。しかし、その成果は芳しいとは言えない。この本はその歴史をまとめている。最初の方は少し退屈だが、徐々におもしろくなってくる。

共産主義としてのニューディール

アメリカ大恐慌—「忘れられた人々」の物語(上)

アミティ・シュレーズ

エヌティティ出版


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最近、ややはやりの大恐慌本の上巻を読んだ。我々が中・高校生のころは、TVAは成功例として教えられたものだ。今から思うにそれは左よりの教科書ということなのだろう。この本では、ニューディール政策が共産主義の影響を大きく受けていること、政策はかなり迷走したこと、実際はそれほどうまくいっていなかったこと、等を示している。WSJやFT誌で執筆するような人であるから、社会主義的なものに対する否定のバイアスはかかっているかもしれないが、今の目から見るとおそらくそれなりに妥当な見方なのだろう。現在のアメリカや日本の政策はニューディールの失敗に学んでいない、ということはできるかもしれない。

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