バブル検証3部作読み終わる
岩波書店のバブル検証の3部作をやっと読み終わりました。経済暗雲はここで紹介したので、残りの2つはこれです。
検証経済失政—誰が、何を、なぜ間違えたか 軽部 謙介,西野 智彦 岩波書店 このアイテムの詳細を見る |
検証 経済迷走—なぜ危機が続くのか 西野 智彦 岩波書店 このアイテムの詳細を見る |
バブル崩壊からの金融危機の裏側を知るのにはなかなかおもしろい作品です。大蔵省・日銀・政府がそれぞれの思惑を持って行動したのですが、不運もあり、日本の金融は弱体化し、大蔵省の力もなくなり、日本の構造自体が変わっていきます。その場面が登場人物の口で語られます。
アメリカは日本の金融危機を反面教師として、今の危機を切り抜けようとしているらしいです。はたしてどのように進んでいくのでしょうか・・・。
e—Taxについて
e-TAXはセールスに必死なようですね・・・。自分も一度チャレンジしようかなと思ったことがあります。しかし、住基カードが必要で、そのカードリーダーも必要という面倒でかつ投資が必要なもので、根性がなくてgive upしました。そこまでして、個人特定を厳密にする必要があるのかね・・・なりすましてうれしいことってあまりないような・・・と思うのですが・・・パスワードセキュリティ程度で良いじゃない。と、思っていたら、e-Taxは、住基カードの利用は見直されるということになったらしいです。記事を探したのですが、ちょっと見つかりませんでした。でも、証券口座も面倒だから確定申告なしに変えちゃったし・・・(利益損益相殺がないので、損するかもしれないけど)。サラリーマンだから、あまり利用する機会はないかな・・・。
金融危機と金融工学
自分の専門は数学だったのですが、大学卒業時にバブル絶頂だったので、多くの卒業生が金融系とくに保険会社に進みました。保険では保険数学と呼ばれる分野があって、保険商品が損をしないように設計する仕事があります。アクチュアリと呼ばれる資格をとるために、皆勉強していました。証券に行く人はまだあまり多くはありませんでした。
同じころから、アメリカでは金融工学が立ち上がります。金融工学は金融商品のリスクとリターンの関係を計算する手法で、確率微分方程式という数学を使います。確率微分方程式は、日本の伊藤清という数学者が発明したもので、日本発の画期的な技術として、大変重要な仕事であって、しかも実世界への応用がなされるようになって、その意義が見直されました。金融工学によりリスクを定量化できるようになって、様々な金融商品の開発が可能になりました。これは数学的にもおもしろいもので、自分も証券会社に行っとけばよかったかな~(給料も断然いいし)。と思っていました。
しかし、金融危機の犯人の1つに、複雑になりすぎた金融工学があげられています。また、金融工学には、リスク(だったかな?ちょっと不確か)の分布を、正規分布と仮定するという単純化がされているので、その有効性に対する批判が以前からありました。
リスクを定量化するというのは画期的なことで、これからも利用されるとは思いますが、現在の状況からすると、今後は金融工学には一定の見直しが行われ、金融工学を専門とする数学担当もその地位があやうくなるかもしれません。ものすごくおもしろかった時代から急に戦犯扱いとなっています。非常に複雑な思いです。
エコノミストは金融危機をどうみるか?
エコノミストの金融危機への見解がいろいろ出てきています。
森永卓朗氏は、それみたことかという感じで発言しています(調子にのって欲しくないですが・・・)。
大前研一氏は、商品が悪かったという見方をしています。まだ市場を信じてますね。
気になるのは野口悠紀夫氏の見解です。まだネット上では出ていないようですが、彼は、日本は世界的なビジネスモデルの変化に乗り遅れていて、イギリス等の金融へのシフトを見習うべきだと言っていました。私のブログでも本を紹介しました。しかしシティは今回の金融危機で大きなダメージを受けています。
自分が懸念するのは、今回の一件で一気に市場否定主義に傾いてしまうことです。原始的な共産主義のようなものが再燃しそうな予感がします。冷静に国の方向性を判断していってほしいと思います。
NBonlineで金融危機特集
NBonline(日経ビジネスオンライン)は最近、金融危機に関する記事が次々に掲載されていて、追っていくのもちょっと大変という感じになっています。その中で、気になったものをピックアップします。
アイスランドは近年、新しいビジネスモデルで飛躍した優良国であると言われていました。それが今回の金融危機で国家破綻の危険性がある、と言われています。特に英国は深刻な影響を受ける可能性があります。
アングロサクソンのモデルに賞味期限は来たか?
状況は「波高シ。サレド天気晴朗」
金融バブル崩壊を予測していた、倉都康幸氏へのインタビューです。ラフな感じのインタビューになっていますが、なかなか興味深いです。アングロサクソンのモデルはもうだめで、シティーとニューヨークの地盤はかなり低下し、EUによる米国からの金融覇権の剥奪を予測しています。
ノーベル賞益川教授のインタビュー
ノーベル物理学賞が日本から3人もでたことは、大きな驚きでした。
その中で、益川教授のインタビューで印象に残ったのは、現状の日本の物理学界をどう思うかと聞かれて、
「物理学の結果というのは、20年・30年たってわかる。米国では30年前に自然科学を志す人が減り、お金儲けの道へ行き、大学は外国人だらけになった。日本で今同じようなことが起こっているように思える。今から30年後が懸念される。」
というような答えをしていました。
米国は自然科学や工学の物作りの国から、金融を中心としたサービスの国になりました。そして、それが今行き詰まっているかもしれないという世界状況にあります。それだけに、上の言葉は重みがあるように感じました。
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また、ちなみに・・・
自分のころはまだ理工系には(かろうじて)人気がありました。私より少し下の代になってくると、医者を目指す人が増えてくるようになります。今は理工系は全く人気がなくなりました。給料安いし、苦労するということで。N○○の社長も以前は理系・文系交代でやってましたが、今は、文系が続いています。今は、文系支配の社会です。これが今後どうなっていくか・・・。
NTTがPostgreSQLベースのEnterpriseDBと提携
NTT、PostgreSQLの普及促進へEnterpriseDBと包括的提携
NTTがPostgreSQLベースのEnterpriseDBと提携,社内利用で30億円コスト削減見込む
NTTはPostgreSQLの改良にこれまで力を入れてきましたが、Oracle互換性等を売りにするPostgreSQLベースのデータベースの開発しているEnterpriseDBに出資することを発表しました。EnterpriseDBにはPostgreSQLのコアな開発者がおり、PostgreSQLの発展が今後期待されます。PostgreSQLコンファレンスで話題となった、NTTの同期レプリケーション技術を用いた大規模分散データベースへの適用でも協力するということで、より適用分野が広がることが期待されます。
B-CASは廃止(「第5権力」としてのウェブ)
池田信夫氏はB-CASの廃止が事実上決まったと述べています。
ウェブの力もだんだんと電波利権を超えるようになってきたということで、良い知らせです。
しかし・・・うーん。年内に地デジレコーダーを買おうかなと思っていた私にとっては、微妙なニュースだ・・・。B-CAS・ダビング10抜きのレコーダーが出てくるのは来年度以降でしょう。どうするかな・・・。
米上院、金融安定化法案可決 有権者は反発強く
とりあえず、少し前進しました(しかし内容は修正された)。日本のバブル崩壊の経験からすると、曖昧にして先延ばしすることは一番よくなく、傷を深めるだけです。日本の金融会社は、粉飾決算(まがい?)を繰り返して延命して、どうしようもなくなるようになって、やっとメスが入れられたという感じです。その間に不良債権は急増し、GDPの1/4にまで達してしまったということです(米国ではまだそこまでは行っていないらしい)。
米国では、
市場原理主義者:市場で生き残ることができないものは速やかに退場せよ
市場介入容認主義者:公的資金を入れても金融システムの安定化をはかれ
という2種類の主張を持ったエコノミストに分かれているようで、池田信夫ブログではそれぞれの主張に近いアメリカの公開書簡が紹介されています。
次は、下院の動向が気になります。選挙という政治的な要素で、否決されるのは必ず避けて欲しいと思います。