数学者:C. Fefferman
ひさびさに数学の話題。Terence Taoのブログで知ったが、20世紀解析学の巨人Charles Feffermanの60歳記念の国際会議が開かれているそうだ(2009年5月4日〜8日)。彼の業績については、Steinが講演する。そのプレゼンのpdfがupされている。正直、まだ60歳だったんだという感じだ。彼が、H1-BMO dualityの論文を書いたのは確か1972年くらい・・・とすると23歳のときだ。如何に優秀であったか分かる(まあ数学には早熟な天才は多いが)。自分が数学を勉強していた1980年代も彼の影響は絶大で、その手法は多少計算力に頼って泥臭いが、Real variable methodとしていろいろな応用に向けて利用されていた。H1-BMO dualityとか感動したものだ(自分はその多変数への応用を研究していた)。彼らの仕事というのは、現在のwavelet理論にも生かされている。偉大な数学者である。
pに頼るようになったらオワリだ
クラリネットという楽器は、管楽器の中で最もピアノ(弱音)を容易に吹くことのできる楽器であろう。木管アンサンブルやオーケストラで一人得意になってdimしたりすると、オーボエやファゴットの顰蹙を買うことがある。
しかし、私はクラリネット奏者の真の実力は、弱音ではなく、むしろ強奏する場面で差がでると考える。弱音だけを美しく聴かせることは比較的容易だが、強音と弱音をきちんと両立させ音楽を成立させるのは大変な技術だ。その点について、ピークを過ぎたベテラン奏者に見られるのは、弱音に頼る演奏である。パワーの無さをピアノのテクニックで補うのだ。それはうまいとは言える。聴衆も感動する(何でそんなに感動するのだろうとも思う)。ストルツマンはそう感じられたし、日本の奏者にもそう感じたことがある。それは奏者にとっては一種の妥協ではないかと思う。
さて、そこで我々のようなしがないアマチュア奏者にとって参考になる点とは何だろうか。それは、アマチュアクラリネット奏者の戦略としては、強音を追求するよりは、弱音を追求するほうが有利であるという事実だ。ときどき、大きな音を吹くことが快感なのかしれないが、やたらとでかく吹くような人を見かける。それは否定しないが、損な戦略だと思う。アマチュアにとっては、ベテランのプロと同じように、強音を捨ててしまって、弱音に集中したほうが、聴衆を攻略するのに近道ができるのだ。オーケストラにいると、音が大きいに超したことはないが、苦労に比べて得することは少ない。勿論、アマチュアの中にも、強音と弱音を両立させる優秀なプレーヤーがいるのは事実だ。彼らは偉大だが、真似するのは難しい。二兎を追う者・・・になってしまうのだ。
プロフェッショナルな教育を受けると基本でかい音を要求されることが多いと思う。レッスンではまずしっかりした音を作ることを要求されるものだ(ホールでちゃんと聞こえないと意味ないとか言われる)。しかし、自分はアマチュアは邪道であろうとも弱音戦略をとるほうが有利であって、プロとしては終わってる道を選択するほうが得だと思うのだ。
トクヴィルとアメリカ
トクヴィル 平等と不平等の理論家 (講談社選書メチエ) 宇野 重規 講談社 このアイテムの詳細を見る |
アメリカに関する論考を見ると、かなりの確率で引用されているのが、トクヴィルの「アメリカのデモクラシー」だ。池田信夫ブログによると、「だれでも知っているが、だれも読んだことがないという意味での古典」なのだそうだ。そこで「アメリカのデモクラシー」を読む前に解説書として本書を読んでみた。トクヴィルは最近(特にアメリカで保守主義が復活してから)見直されているのだそうだ。大統領の演説にはよく引用されるらしい。アメリカのデモクラシーを一種の理想として描いているからだ。それは19世紀のフランス貴族の出である彼の目から描かれている。機会の平等を基本とし、一見、各人が自身の利益を追求しているように見えながら、全体の利益にも繋がるという、デモクラシーの理想型ととらえている。非常に魅力的な思想だ。「ザ・フェデラリスト」と共にアメリカ論の古典として知られている。次は、「アメリカのデモクラシー」本文を読んでみたいと思う。
議員の世襲制限について考える
今の議員に二世・三世が多い現状というのは、よろしくないとは思うが、だからといって世襲を制限するということには疑問を呈したい。まず、世襲って何なんだ?という疑問がわく。世襲の定義が、「親が議員であった選挙区から立候補することである」にすぎないならば、これを制限する法律は自由主義国家ではありえないのではないか(民主・自民ともに立法ではなく、マニフェストとして実行するらしい・・・でも法の精神に反したマニフェストなんて・・・)。
自分は相続税の存在を否定しない。世代間の富の移動をちょっとくらい制限してもいいだろう。しかし、議員の世襲というのは、それを制限するうまい方法がないという気がする。「地盤」という形にできないものは制限しようがない。もし世襲が嫌なら二世議員に投票しないことではなかろうか。
リンク: 「同一選挙区は規制を」 自民・菅氏が世襲制限で.
によると、やはり同一選挙区で立候補することが問題らしい。規制するべきなのは経済的な問題ではないのかなあ・・・(よくわからない)
次回の出番(第615回横響定期演奏会)
横浜交響楽団 第615回定期演奏会
【横浜開港150周年】
日時:2009年6月21日(日) 午後2時
場所:神奈川県立音楽堂
1. 横浜市歌(合唱付) 曲:南 能衛/詩:森 林太郎
2. 組詩曲「横浜1947年」 小船幸次郎
3. 歌劇「黒船」序景 山田 耕作
4. 歌劇「カルメン」より ビゼー
次回の出番は、横浜市歌と黒船のバスクラと、カルメンの1stの予定です。うん、カルメンはまた解説ネタができそうだ。また、本番前にちょっとしたサプライズをやろうと思っていますので、ご期待くださいませ・・・(って期待する人いないか・・・)
ダイバーシティを推奨する勝間和代氏
リンク: 今だからこそ東京オリンピック | NBonline SPECIAL.
アメリカでは、人種、性別、年齢、価値観など、あらゆる多様性を積極的に受け入れることで、優秀な人材を幅広く確保し、ビジネスの成長につなげようという「ダイバーシティ」という考え方が広く認識されています。
ダイバーシティについては、昨今の大企業も取り組んでいるようだ(障害者雇用何かは大事なことだと思う)。しかし、自分はダイバーシティという言葉には、アメリカエリートのスノビズムのにおいを感じてしまう。勝間氏は広く認識されていると言うが、アメリカの一般大衆はもっと保守的だろう。アメリカで移民が問題起こしまくっている(犯罪ということではなくて、アメリカ人のアイデンティティに対して危機をもたらしている)ことを考えると、安易にダイバーシティなんて言えないと思う。日本も将来。大量に移民を受け入れなければならないような日が来るかもしれないが、今はまだそっとしておいてあげる方が良いような気がする。しかし、それは衰退を受けいれることを意味するのかもしれない。移民の活力が日本を救うのかもしれない。それは日本人の日本における位置の低下となるだろう。それを受け入れる準備はできているのであろうか?グローバルに生き残るために彼女の本を読んで行動しなければならない・・・ということなのか(私はちょっと・・・)。
自由の奥は深い
集中講義!アメリカ現代思想—リベラリズムの冒険 (NHKブックス) 仲正 昌樹 日本放送出版協会 このアイテムの詳細を見る |
アメリカが、現代、アイデンティティの喪失を迎えつつある中で、自由や平等をどう、考えとらえ直し、体系化していったかという自由論の解説書だ。リベラリズムからリバタリアン・コミュニタリアン等、一通り触れられていて大変参考になる。しかし、自由の思想の奥は深い。ハイエクやハンチントンをちょっと読んだだけで、アメリカを知ったような気になってはいけない・・・と自戒した。
20世紀音楽のバイブル:ラサールQ
新ウィーン楽派の弦楽四重奏曲集(4枚組)
販売元:Brilliant Classics |
20世紀音楽のバイブルとも言える、ラサール弦楽四重奏団の新ウィーン楽派の四重奏曲集が廉価版となって発売された。リンクはamazonだが、自分はHMVで割引で2000円以下で入手した。4枚組でこの値段で買えるとは良い世の中になったものだ。聴いてみたが、今の耳で聞いても全く古さを感じさせない。偉大な演奏だ。バランス・技術・・・完璧なアンサンブルとはこういうものを言うのだろう。特にシェーンベルクが素晴らしいと思う。シェーンベルクのカルテットは、最近、録音や演奏会で見かけることは少ないと思う。しかし、2番は(歌が入るという変則的な曲だが)大変な傑作だと思うし、1番も後期ロマン派的な薫りの高い、とは言ってもマーラー等とは一味違った、濃い独特の世界だ。
このCDだが、廉価版にありがちな音の雑さはなく、優秀なマスタリングだと思う。後継者たちが、凌駕しようという意欲を失わせるような決定版と言えるだろう。現在、販売されていないツェムリンスキーの全集のCD化も望まれるところだ。
3月期決算発表、焦点は「繰り延べ税金資産」:日経ビジネスオンライン
リンク: 3月期決算発表、焦点は「繰り延べ税金資産」:日経ビジネスオンライン.
GW明け、5/8に大きなところの決算が発表されるようだ。注目される。東芝・日立・・・。Softbankは既に発表があったが、世間が心配していたような状況ではなかったようだ。
藤沢周平を読む
三屋清左衛門残日録 (文春文庫)
著者:藤沢 周平 |
最近、時代物がはやっているという。自分はその手の作品を全く読んだことがなかったが、はやりにのって少し読んでみることにした。江戸時代に少し興味がある。選んだのは藤沢周平の三屋清左衛門残日録だ。隠居した元用心のエピソード集というものだ。江戸武士のこころがわかるのではないかと期待して手に取った。
感想だが、良質なエンターテイメントという感じだ。これを時代物というのだろうか?という疑問がわいた。設定は江戸時代にしているものの、扱っているテーマは普遍的・・・というほど大げさではないが、現代にも通用するものである。文体も平易だし、非常に現代的であると感じられた。また、主人公は隠居とは言うもののヒーローとして描かれている。物語として読みやすい。こういう話を好む人は多いだろう。テレビドラマにもしやすそうだ。しかし、自分には物語を楽しむという習慣があまりない。実用的な本のほうが基本好きなのだ。これだけ読めば、この作家についてはもう十分という気分だ。