世界経済危機 日本の罪と罰 野口 悠紀雄 ダイヤモンド社 このアイテムの詳細を見る |
最近は森永卓郎などの市場否定主義者(否定は言い過ぎかな消極主義者)が、発言力を増していて、マスコミに出ては「それみたことか」と騒いでいます。自分はこれには納得できないので、その対極の位置にある、エコノミスト野口悠紀雄の見解が出るのを待っていました。本が発売になったので、すぐに購入して読んでみました。
それは、かなり悲観的なものでした。基本的な主張は、これまでの極端な円安政策によってもたらされた円安が異常な状態であって、それが円キャリートレード→アメリカへの投資→アメリカの赤字拡大→日本車が売れる→・・・という投機的循環のバブルがはじけたというものです。これまでの円は適正な価格よりも大幅に低く設定されていた。それが、既存の非効率な輸出産業を温存する結果になってしまった。世界的な経済の破綻は日本に大きな責任があるという考えです。日本はアメリカに対して、貸し倒れをしたような状況になっていて、その損失は既に数十兆円にも上る。これは財務部門が弱かった(知恵がなかった)ためで自業自得だと指摘しています。不況の影響は、米国以上に日本に打撃を与えるであろうと予測しています。
輸出依存の産業構造を変革しない限り、日本の産業が発展することはないとしています。これは、物作りを重視する森永に対立するものです。また、一次産物(原油・食料等)の価格上昇に対して、自給率向上のオピニオンはナンセンスで、食料の輸入の自由化を主張しています。円高の状態でも成立するビジネスモデルを構築する必要があると。
IT・金融等での国際競争力の必要性も言われています。
あっという間に読めましたが(内容はわかりやすい)、状況は自分が考えていたよりもはるかに深刻という印象を受けました。どちらかというと自分は現在保護されている側にいる人間なので、その自分に何ができるか、というのをきちんと考えないといけないと思いました・・・。