自分の専門は数学だったのですが、大学卒業時にバブル絶頂だったので、多くの卒業生が金融系とくに保険会社に進みました。保険では保険数学と呼ばれる分野があって、保険商品が損をしないように設計する仕事があります。アクチュアリと呼ばれる資格をとるために、皆勉強していました。証券に行く人はまだあまり多くはありませんでした。
同じころから、アメリカでは金融工学が立ち上がります。金融工学は金融商品のリスクとリターンの関係を計算する手法で、確率微分方程式という数学を使います。確率微分方程式は、日本の伊藤清という数学者が発明したもので、日本発の画期的な技術として、大変重要な仕事であって、しかも実世界への応用がなされるようになって、その意義が見直されました。金融工学によりリスクを定量化できるようになって、様々な金融商品の開発が可能になりました。これは数学的にもおもしろいもので、自分も証券会社に行っとけばよかったかな~(給料も断然いいし)。と思っていました。
しかし、金融危機の犯人の1つに、複雑になりすぎた金融工学があげられています。また、金融工学には、リスク(だったかな?ちょっと不確か)の分布を、正規分布と仮定するという単純化がされているので、その有効性に対する批判が以前からありました。
リスクを定量化するというのは画期的なことで、これからも利用されるとは思いますが、現在の状況からすると、今後は金融工学には一定の見直しが行われ、金融工学を専門とする数学担当もその地位があやうくなるかもしれません。ものすごくおもしろかった時代から急に戦犯扱いとなっています。非常に複雑な思いです。